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細胞外での殻構築機構の解明

一般に、生物の形態は細胞の変形によって形成されると考えられていますが、一部の生物は細胞外の物体を操作することによって生物の形を作り出すことができます。これは、これまでの形態形成の概念を覆すものです。さらに、このような形態形成の様式は様々な系統群において観察されることから、細胞が持つ普遍的な機能によって実現されていると考えられます。しかし、そのメカニズムは全く分かっていません。

細胞外の物体を操作することによる形態形成という、新しい形態形成の原理を明らかにするべく、有殻アメーバを用いて研究しています。

 

これまでに、有殻アメーバの一種Paulinella micropora(以下ポーリネラ)において、その殻がどのようにできるのかをタイムラプスビデオ撮影や電子顕微鏡などを用いて観察してきました。​​​ポーリネラは約50枚のガラスの鱗片から構築された被殻を持つ有殻アメーバの一種です(図1)。ポーリネラの卵型の被殻は非常によくデザインされており、形や大きさの異なる鱗片が正確に配置されています(図1B)。

fig2.jpg

では、この卵型の被殻はどのように構築されるのでしょうか?

まず、ガラスの鱗片が細胞内で形成されます。その後、開口部から細胞外へ分泌され、細胞外に保持されます。すべての鱗片が分泌され終わると、被殻構築が始まります。開口部の側から伸びる太い仮足によって一枚一枚鱗片が積み上げられてゆき、卵型の被殻が完成します。その後、娘細胞の一つが新しい被殻に移動し、分裂が完了します。

ポーリネラ殻形成過程.jpg

神経系をもたない単細胞生物がどのようにして細胞外の物体を操作し、鋳型のない空間に母細胞と同じ形の被殻を形成することができるのか?

これまで、形態学的にポーリネラの被殻構築を観察してきました。現在は分子生物学的手法等を用いてその分子メカニズムを明らかにしようとしています。

参考文献

Nomura et al. 2014 J Eukaryot Microbiol, 61: 317-321

Nomura and Ishida 2016 Protist, 167: 303-318

Nomura and Ishida 2017 Plant Morphology, 29: 47-51

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